筆者の情報
経歴
- 2014-04-01,高等学校(初任校)数学科教諭
- 2014-03-25,大阪大学大学院理学研究科数学専攻修了,修士(理学)
- 2012-03-22,大阪大学理学部数学科卒業,学士(理学)
資格
教育に関する資格は以下です1。
- 高等学校教諭専修免許状(数学)
- 高等学校教諭一種免許状(情報)
- 中学校教諭専修免許状(数学)
数学教育への興味
数学を理解するとはどういうことか、そしてそのためにどのような授業を展開し生徒にどのような経験を積ませるべきかを考えています。生徒にとって、数学では問題が解けるようになることが目的化しがちです。それは、定期試験による評価と大学受験への対応のためでしょう。しかし、本来は数学を理解することができたかを知る手段として問題を解いてもらうのであって、本質的な理解を置き去りにしてもとにかく問題が解ければよいということではありません。とはいえ、そもそも本質的な理解という言葉そのものが曖昧です。本質的な理解とは何なのかを追求し、さらにどのようにしてそれを生徒に身に付けてもらうのか、試行錯誤を続けています。
文化としての数学をどのようにすれば伝えられるかを考えています。数学は嫌われがちな教科です。「数学をこれ以上しなくともよいように」と文系を選択する生徒が決して少なくないことは、想像に難くありません。しかし、数学とは新たな知を得ようとする人間の営みです。数えきれない人間たちが数学に人生を捧げてきました。その実りを現代の私たちは享受しています。数学的な手法は生活に根付いています。点数を取ることが目的になると、どうしてもそうしたことが忘れられます。そして、「数学は一部の人が勉強しておけばよい」「四則演算ができれば生活に支障はない」などの言説が蔓延ってしまいます。芸術と等しく教養として・人生の味わいのひとつとしての数学を楽しんでもらえるように、そしてその意義を他者へ広げてもらえるように、生徒に数学を伝えようと授業に臨んでいます。
数学探究への興味
大学・大学院時代は角大輝先生2に師事し、フラクタル幾何学を測度論的にアプローチすること(測度論的力学系)を専門に学びました。これについて、不正確を怖れず簡単に述べてみます。
細部を拡大すると再び同様の構造が現れる図形をフラクタル図形3と呼びます。このような図形に対しては、たとえば、$1$ 次元(すなわち長さ)で測ると $\infty$ となり、一方 $2$ 次元(すなわち面積)で測ると $0$ となってしまうことがしばしば起こります。このとき、$1<t<2$ のどこかに、$s<t$ であるような $s$ では $\infty$ であり、かつ $t<u$ であるような $u$ では $0$ となるような境界 $t$ を見つけられることがあります。この $t$ を Hausdorff 次元4と呼びます。なお、フラクタル図形の「測りかた」5にはいくつかの流儀があります。修士では、任意の $d\in \boldsymbol{\mathrm{N}}$ と $0<a<d$ に対し、その「測りかた」のうち packing 次元が $d$ でありながらも Hausdorff 次元は $a$ となるような図形が構成可能であることを示しました。
現在は、修士時代に研究した内容のほか、数学基礎論・数理論理学にも興味を持っています。また、高校数学のそれぞれの分野を厳密に基礎づけること、あるいは高校数学で気軽に行われるさまざまな操作を数学的に保証すること、などに興味を持っています6。また、こうした価値観を伝えられるような資料を書きあげたいと考えています。