分かりやすさの意味(技術書の後書きから)

小川晃通氏のツイート

次のような素晴らしいツイートを見かけました。この文章は,「技術書のわかりやすさ」について述べられたものですが,数学の授業・参考書のわかりやすさについても近い部分がたくさんあるように思います。

あなたが,「分かりやすい」授業・参考書・ウェブサイトこそが尊いものだとお考えになっているのであれば,ぜひ一度読んでみてください。

技術書の「わかりやすさ」って、こういうことだと思う
午後11:46 ・ 2021年11月18日1

続き
午後4:02 ・ 2021年11月19日2

数学との対応(私見)

授業で配るために(著作権法の例外を用いて),先のツイートを引用しながら数学を学ぶ態度に関するコラムを書きました。同じものをこのウェブサイトに載せることは(著作権法のために)できませんが,次に私がつけた補足を書いておきます。

  • 引用の前文
    授業や書籍の評価にはいろいろとありますが,あなたは「分かりやすさ」ばかりを尊んでいませんか。分かりやすいものはその学問に親しみを持たせてくれるという素晴らしい意義がありますから,悪いものとまでは思いません。しかし,それがあなたの理解を深めてくれるのかというと,そうではないのです3。分かりやすいものばかりをありがたがるのは,あなたの周りにイエスマンばかりを置くことと同じです。
    さて,とある技術書の後書きが素晴らしかったので,これを紹介します4。分かりやすい授業・分かりやすい参考書がどういう側面を持っているのか,どうか頭の片隅に置いておいてください。
  • ……「理解できる本」ではないのです。
    「わかりやすく数学を説明する」目的のものは,書籍であれ授業であれ,本質的に同じです。
  • ……「わかりやすさ」を確保することが多いのです。
    授業であっても,教科書・参考書であっても,本来考えなければならないところを敢えて無視したり,曖昧な言いかたでごまかしていることはたくさんあります。そうしなければいつまでも話が進みませんし,まずは大枠を分かってもらいたいという教育的事情もあるでしょう。
  • ……疑問が次から次へと湧いてきてしまうのです。
    そうした疑問は,遠慮なくこちらにぶつけてください。
  • 1から5の箇条書き
    数学であれば,「調べる」は「考える」に置き換えるとよいでしょう。
  • ……そんな囁きがいたるところに点在しています。
    完全に言い換えられるとは思いませんが,「細かい部分」とは仮定の必要性から各種の議論にまでわたる証明の深い理解だと思ってもよいでしょう。
  • ……ハマってみて初めてわかることもあるのです。
    あなたが演習をするのはこのためです。間違えた問題を丁寧に検証しなければ,演習が意味を持たないことが分かるでしょう。逆に言えば,間違えたときこそ学びを深めるチャンスなのです。
  • ……まだまだ修行は続きそうです。
    私自身も,著者と同じです。授業の準備をしながら再度考え直すことも,授業が済んでから「おや」と思うことも,後日訂正することもあります。私が理学部数学科に進んだのは2008年のことですが,今も日々そのように数学を学んでいます。

  1. 小川晃通,(Twitter)。Twitter,参照 2022-08-13。 ↩︎

  2. 小川晃通,(Twitter)。Twitter,参照 2022-08-13。 ↩︎

  3. 柔らかいものばかりを食べていれば歯は衰えます。そうなると硬いものは味わえなくなるでしょう。学問の実りはたいへん美味ですが,それはたいていとても硬いのです。 ↩︎

  4. 傍注はすべて引用元にはなく,私が追加したものです。 ↩︎