LaTeX エンジンとして LuaLaTeX を勧める理由12
概要
これから LaTeX を使おうとお考えのかたへ向けて,古い入門書や入門記事でよく現れる pLaTeX や upLaTeX ではなく,LuaLaTeX を選ぶべき理由をお伝えします。
次のようなかたは,リンク先の記事をお読みください。
内容
LaTeX はそもそも,英語での組版のために作られました。したがって,日本語を取り扱うには拡張機能を使わねばなりません。現在,日本語を取り扱う方法には次のようなものがあります。
- pLaTeX / upLaTeX
- LuaLaTeX-ja
- XeTeX
- etc.
しばらく前(2000 年代後半ごろ)までは pLaTeX / upLaTeX しか選択肢がありませんでした。そのため,web 上で見られる記事の多くは pLaTeX / upLaTeX を前提にしています。今でも pLaTeX / upLaTeX がよく使われているのは,過去に書かれた記事がそのまま残っていること・昔に決められた pLaTeX / upLaTeX 用の様式が変わらず使いまわされていることによるものだと考えています。あなたも,web 上にある記事を見て LaTeX を使い始めたのなら,よくわからないまま pLaTeX / upLaTeX を使っているかもしれません。
しかし,ここ最近の LaTeX 本体(拡張機能を載せるもととなるの欧文用のソフトウェア)の進化に伴い,これまで日本で主流として使われてきた pLaTeX / upLaTeX がうまく動かなくなってゆくことが懸念されています4(2022年08月現在でも,この危険は続いているようです56)。
したがって,これから使う LaTeX として pLaTeX / upLaTeX は避けるべきでしょう。残る LuaLaTeX と XeLaTeX では,LuaLaTeX がよりよい環境だと考えます。LuaLaTeX のほうが日本語向けの処理系や知見が多く開発に勢いがあること,欧文で主流となっている pdfTeX の後継となることが予定されていることなどがその理由です。
私が自身で使い・公開している教材作成用の LaTeX プリアンブルである the Japanese Educational Preamblesも,LuaLaTeX 用として開発しています7。
LuaLaTeX の導入についてはこちらをお読みください3。
現在 pLaTeX / upLaTeX をお使いのかた
pLaTeX / upLaTeX から LuaLaTeX に乗り換えるにあたって,手間はほとんどかかりません8。TeX Live をお使いならコンパイルするエンジンを切り替え,いくつかの命令(とくにパッケージとパッケージのオプション)を書き換えるだけで済みます。pLaTeX / upLaTeX から LuaLaTeX に乗り換えるにはこちらをお読みください。
詳細
LuaLaTeX の展望
- 日本人の知らない TeX(2010年の記事)9
- 2010 年の記事です。今は LuaLaTeX-ja によって pLaTeX / upLaTeX と同じかそれ以上の品質で組版ができます。
LuaTeX-ja /LuaLaTeX-ja のマニュアル類
- LuaTeX-ja パッケージ10
- LuaLaTeX-ja 用 jsclasses 互換クラス11
- CTAN: Directory macros/luatex/generic/luatexja/doc12
- CTAN: luatexja13
LuaLaTeX のその他の利点
参考
-
追記 2022-07-27。The Japanese Educational Preambles の公開に伴い取り急ぎリンク集として公開していたところ,内容を執筆しました。 ↩︎
-
追記 2023-08-13。内容が明らかになるよう,タイトルを「LuaLaTeX のすすめ」から変えました。 ↩︎
-
改訂 2023-08-13。リンク先を変えました。 ↩︎
-
acetaminophen,pLaTeX が本格的にやばいかもという話。Acetaminophen’s diary,参照 2022-07-26。 ↩︎
-
ZR-TeXnobabbler,“pLaTeXがヤバい”問題を一気に解決する話(※ただし画期的)。マクロツイーター,参照 2022-08-29。「一方で、この問題について別の画期的な観点から……」以降はジョークであることに注意してください。 ↩︎
-
追記 2022-08-29。 ↩︎
-
追記 2023-08-13。The Japanese Educational Preambles の uplatex 版開発終了を踏まえて加えました。 ↩︎
-
追記 2023-08-13。ここから次の文まで。 ↩︎
-
八登崇之,日本人の知らない TeX。TeXユーザの集い 2010,参照 2022-07-27。 ↩︎
-
LuaTeX-ja プロジェクトチーム,LuaTeX-ja パッケージ。CTAN,参照 2022-07-27。 ↩︎
-
LuaTeX-ja プロジェクト,LuaLaTeX-ja 用 jsclasses 互換クラス。CTAN,参照 2022-07-27。 ↩︎
-
(CTAN),Directory macros/luatex/generic/luatexja/doc。CTAN,参照 2022-07-27。 ↩︎
-
(CTAN),luatexja – Typeset Japanese with Lua(La)TeX。CTAN,参照 2022-07-27。 ↩︎
-
ZR-TeXnobabbler,例の「verb の呪い」を LuaTeX の力で打破する(bxrawstr パッケージ)。マクロツイーター,参照 2022-07-27。 ↩︎
-
(Wiki),発展編:最近の LaTeX の動向。TeX Wiki,参照 2022-07-27。 ↩︎
-
daiji,LuaLaTeXのすゝめ。Daiji Blog,参照 2022-07-27。 ↩︎